性風俗取り締まりは中国を救うのか

広東省の東莞市で性風俗の厳しい取り締まり(中国では「厳打」と呼ばれる)が行われたことは、中国国内でも大きく報道され、娘が東莞に出稼ぎに出ていた、というだけで、面子を失ってしまった農村部の親も多い。東莞は台湾・香港系製造・組立業を中心とした工場が多く、地方や農村から多くの労働者が出稼ぎに来ているわけで、性風俗労働者は少数派なのにである。

東莞での性風俗取り締りは日本でもニュースになったほどだから、ご存じの方も多いと思う。
でも、東莞の取り締まり以降、中国の各地で「厳打」が行われていることを、中国国内報道ではあまり触れないし(各地方レベルではニュースになっているようだが、東莞のように全国的に大きく報道されることはない)、あまり話題にもなっていない。

北京のとあるホテルでは、23時以降の訪問者が全面的に拒絶された。
レギュレーションではホテルのフロントで訪問者が身分証を提示して登録すれば入れてもらえることになっている。とは言え、出張性風俗労働者は身分証を所持していないケースが多く(逃亡できないよう胴元が預かってしまうらしい)、通常の運用ではホテル側黙認のまま、無登録で入れてもらえるケースが多い。ホテル或いは警備員などに金品提供して”提携”している場合も多い。
ところが、2週間ほど前に北京のホテルに宿泊した際、登録するためフロントに声をかけたのに、男性訪問者ですら一切ダメと言われたのだ。

ぼくは性風俗ではない一般的な出張マッサージをときどきホテルに呼ぶ。ホテルから馴染みのマッサージ店に連絡すると、「いま厳しくなっているので男性マッサージ師で良いですか?」と問われたのでOKして待った。このお店は女性マッサージ師は、きちんとホテルで身分証を示し登録してから部屋に上がってくる。それでも入れてもらえないケースが続出したので、男性マッサージ師ならば部屋に通してもらえるだろうという算段だったのだろう。数十分後、マッサージ店から連絡があり、男性マッサージがロビーで待っているから迎えに言ってもらえないか、と。下りると馴染みの男性マッサージ師だったので、警備員に友だちだ、と説明したのにダメで、フロントに掛け合ったが、現在は23時以降の訪問者はいっさい通していない、と言われた。
結局、そのマッサージ師にはタクシー代を払って、帰っていただいた。

上海では、いかがわしい床屋やマッサージ店がほぼ壊滅状態とのこと。
いっぽうで、高級ナイトクラブやカラオケ店には直接的な摘発はなかったようだ。もちろん、「お持ち帰り」などは自粛しているように推察するが。

東莞の「厳打」が中央政府の指示のもとで行われたわけだから、他の地域でも行われるのが当然といえばそうなのだが、中国では何処かや誰かを見せしめにして収拾させるケースのほうが多い。今回の全国的「厳打」は習近平体制の「聖域なし」的姿勢のあらわれならば、それはそれでいいのだが。
「厳打」を表に立てた権力闘争ともお手柄競争とも言われている。
性風俗が目的ではなく、性風俗関係者や利用者に反体制的な組織が紛れ込んでいるから、などと解説する中国の知人もいる。

断じて性風俗を肯定するつもりはないが、「厳打」後の東莞は活気を失った、と聞いている。客の多くは香港からの日帰り・一泊組だったりするのだが、彼らは性風俗にだけお金を落とすわけではなく、タクシーにも乗れば、食事もするだろうし、宿泊もするだろう。
さらに気の毒なのが、中国の性風俗労働者だ。
自身の贅沢のため仕事に就いている人も多いだろうが、地方・農村部出身者の中には家族への仕送りのために性風俗に従事している人たちも多いのだ。職を失えば、田舎の家族の現金収入が無くなってしまう。

上海で「厳打」されたのは、主に中低所得者が年数回の贅沢のために通うようなところ。いっぽうで、金持ちにはいくらでも享楽の聖域は残されている。

性風俗取り締まりは中国を救うのだろうか。