女神記 – 桐野 夏生

陰の巫女・ナミマとその姉で陽の巫女・カミクゥの物語。
ナミマと彼女を裏切った男・マヒトの物語。
そして、イザナミとイザナギの物語。

ナミマが育った南の島は、琉球の創世神アマミキヨが降りて国造りを始めたとされる沖縄県久高島をモデルとしているようです。
久高島にはいまも女性を守護神とする精神文化を伝え残しており、つい最近まで神女となるための通過儀礼イザイホーが行われていたそうです。
ナミマは掟を破り、マヒトは”家”のためにナミマを裏切り、妹と夫の過去を悟ったカミクゥは海に身を投げます。
イザナミは、イザナギに裏切られ、黄泉の国で毎日千人の元夫の”後添い”を殺し続けます。

イザナミはイザナギとの交合により、日本を形づくる島々や森羅万象の神々を産みました。
けれども、日本の国造りに関わるアマテラスを始めとする神々(人神)は、イザナミと離縁した後に、穢れを禊いだイザナギが”単性生殖”で産み出しました。
男と女、生と死、陽と陰、昼と夜、明と暗、浄と穢、天と地。
前者は尊く後者は卑しいとされ、古事記の世界でも、女神は陰であり、創造は男神の専任事項とされたのです。
大阪市長の例の発言も、きっとこうした精神が根源にあっのでしょう。
しかしこの物語で、イザナミは終始イザナギより優位に立ち、ナミマはマヒトを赦すことになります。
桐野は、きっと女性の本質的な強さと尊い役回りを描きたかったのでしょう。

国会事故調 報告書

東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が国会に提出した報告書。

お役所仕様のB5判横組み592頁、しかもエグゼクティブ・サマリー、サマリー、本文と三層構造になっていて、非常に読みにくい書物だった。

でも、テレビや新聞だけでは知りえなかった多くの(恐らく)事実が明らかになった。

まず、現場の人たちは、事故発生当日3月11日夜の時点で、既にメルトダウンを認識していたこと。

現場の人達は、官邸がどうこう議論したり指示したりする随分前に、ベントの準備を始めていたこと。

当時の清水東電社長や幹部が、どう考えていたかは別として、現場の人達は、最期まで現場に留まり、原発のコントロールを保とうとしたこと。

11日夜に出された政府の3Km圏内避難指示は、対象住民どころか、福島県にすら伝わっていなかった。

避難指示を受けた住民の9割には、その理由が原発事故だと伝えられなかったし、津波や余震のために避難するのだと受け止めた住民がほとんどだった。

準備していたヨウ素剤は、ほとんど配布すらされなかった。

原因はいろいろ指摘されている。対策や提言も記載されている。

ただ、最も重要なのは事実がかなり客観化されて明らかになったこと。

政府や東電に甘いと思われる記述も多いが、より多くの人たちに読んで欲しい書物だと思った。

本書は国会図書館のサイトからもDLできるが、パソコンの画面で完読するには根気が必要だと思う。